AI 処理を変える 光学チップの革新技術

みなさん、こんにちは。今回は、AI の計算処理を大きく変えるかもしれない新しい光学チップの話題をお届けします。

光学技術の進化と AI チップへの応用

20 年ほど前、デューク大学のデイビッド・R・スミス教授が「メタマテリアル」と呼ばれる人工的な複合材料を使って、現実世界での「透明マント」のようなものを作り出しました。これはハリー・ポッターの透明マントのように完全に見えなくなるわけではなく、特定のマイクロ波の光を遮る程度のものでしたが、この研究が電磁気学の分野に影響を与えました。

その後、デューク大学発のフォトニクス(光技術)スタートアップ「Neurophos」が、このメタマテリアルの研究をさらに進め、AI の計算能力を大幅に向上させつつ、消費電力を抑える技術を開発しています。

Neurophos の「メタサーフェスモジュレーター」とは?

Neurophos は「メタサーフェスモジュレーター」と呼ばれる光学的な特性を持つ素子を開発しました。これは、AI の推論処理で重要な行列ベクトルの掛け算を行う「テンソルコアプロセッサー」の役割を果たします。従来の GPU や TPU はシリコンベースのトランジスタを使っていますが、Neurophos の光学チップはこれを光の力で行うため、処理速度が速く、消費電力も抑えられるとされています。

この技術のポイントは、従来の光学トランジスタより約 1 万倍も小さいメタサーフェスを使っていること。これにより、チップ上に何千ものモジュレーターを搭載でき、多くの計算を同時に処理できるため、効率が大幅に向上すると言われています。

資金調達と今後の展望

Neurophos は最近、ビル・ゲイツのベンチャーキャピタル「Gates Frontier」などから 1 億 1,000 万ドルの資金調達を行いました。Microsoft の投資部門も参加しており、注目度の高さがうかがえます。

同社の CEO、パトリック・ボーウェン博士は、Neurophos の光学処理ユニットは Nvidia の最新 AI GPU「B200」を大きく上回る性能を持ち、消費電力も大幅に低いと主張しています。具体的には、Neurophos のチップは 56 GHz で動作し、ピーク 235 Peta Operations per Second(POPS)を達成しながら 675 ワットの消費電力で済むのに対し、B200 は 9 POPS で 1,000 ワットを消費するとのことです。

ただし、Neurophos の製品が市場に出るのは 2028 年頃とまだ先の話で、Nvidia をはじめとする既存の大手企業が支配する市場でどこまで存在感を示せるかはこれからの課題です。

光学チップの課題と Neurophos の強み

光学チップは理論上、電気を使うシリコンチップよりも熱が出にくく、高速で動作しやすいというメリットがありますが、従来は部品が大きくなりがちで量産が難しいという問題がありました。また、デジタル信号とアナログ信号の変換に多くの電力を使う点も課題です。

Neurophos は、メタサーフェスの小型化によりこれらの問題を一気に解決できると考えています。さらに、同社のチップは標準的なシリコン製造プロセスで作れるため、量産のハードルも下がる可能性があります。

まとめと今後の注目ポイント

Neurophos の技術は、AI の計算処理におけるエネルギー効率の壁を突破し、高速かつ省電力な光学チップを実現しようとする試みです。まだ実用化には時間がかかりそうですが、既存のシリコンベースの GPU に対して大きな性能差をつけられる可能性があるため、今後の動向が非常に気になります。

個人的には、光学技術と AI チップの融合はこれからのコンピューティングの未来を変えるかもしれないと感じています。Neurophos のような新興企業がどのように市場に挑戦していくのか、引き続きウォッチしていきたいですね!