米大手仮想通貨取引所のCoinbaseが、アメリカ財務省に対して、長年使われてきたアンチマネーロンダリング(AML)規制は時代遅れであり、AIやゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proofs)などの最新技術を取り入れてデジタル資産の不正検知を進化させるべきだと提言しました。
Coinbaseは、財務省がデジタル資産に関わる不正行為の検知に関する革新的な手法について意見募集を行ったことに応じ、AIを活用したコンプライアンスのための規制上の「セーフハーバー(安全地帯)」の設置や、分散型ID(Decentralized IDs)を本人確認の有効な手段として認めることを求めています。これにより、KYC(顧客確認)手続きの重複やプライバシーリスクを減らし、コスト削減にもつながるとしています。
Coinbaseの法務責任者であるPaul Grewal氏は、「金融犯罪の手口が進化するならば、我々も革新で追いつく必要がある」とツイートし、現行のAMLルールは「紙ベースの金融システムを前提とした古い仕組み」であり、現代のデジタル資産取引には合わないと指摘しています。
また、Hex Trustの法務・コンプライアンス責任者であるFederico Fabiano氏は、従来の「チェックボックス型」のコンプライアンスは限界に来ており、AIとブロックチェーンの透明性を活用した新しい方法への移行が必要だと述べています。これにより、低価値で静的なデータに依存する問題を解決し、より信頼性の高い金融エコシステムを築ける可能性があるとのことです。
問題点の整理
Coinbaseは、現在の規制ではアメリカ人が金融口座ごとに新たなKYCを求められ、その情報が多数の企業に長期間保存されるため、犯罪者にとって「ハニーポット(格好の標的)」になっていると指摘しています。これを解消するため、分散型IDやゼロ知識証明を本人確認の正式な手段として認めるよう、銀行秘密法(Bank Secrecy Act)の改正を提案しています。
さらに、Coinbaseはトランザクションの監視においては、従来の方法よりもブロックチェーン分析や「Know-Your-Transaction(KYT)」のような新しい技術の方が効果的であると主張しています。実際、金融機関は年間2,500万件以上の報告をFinCENに提出していますが、その多くは合法的な取引であり、実際に追跡調査に繋がるケースはごくわずかだといいます。
一方、プライバシー保護団体のCoin Centerは、安定コインに従来のAML規制を適用すると、中央銀行デジタル通貨(CBDC)のような「監視社会的な監視体制(パノプティコン)」が生まれる可能性があると警告しています。
現在、財務省はこれらの意見をまとめ、議会の銀行・住宅・都市問題委員会や金融サービス委員会に報告し、今後の指針や法案の策定に活かす予定です。
このように、Coinbaseをはじめとする業界関係者は、デジタル資産の特性に合った新しい技術を活用したAML規制の刷新を強く求めており、今後の動向に注目が集まっています。