Ÿnsect破産の真実!昆虫タンパク質の壁とは?
みなさん、こんにちは。今日は、フランスのスタートアップ企業 Ÿnsect(イーセクト)についてお話しします。あの「アイアンマン」ことロバート・ダウニー・Jr.が2021年のスーパーボウル週末にテレビ番組で紹介し、一躍注目を集めた企業ですが、残念ながら約4年後に破産手続きに入ったというニュースがありました。
Ÿnsect の挑戦と資金調達の背景
Ÿnsect は昆虫を使ったタンパク質生産で「食のチェーンを革命的に変える」と掲げていましたが、実際には人間の食用よりも、動物の飼料やペットフード向けの昆虫タンパク質に注力していました。しかし、この2つの市場のどちらに重きを置くかがはっきりせず、経営の舵取りに迷いがあったようです。
2021年にはオランダの Protifarm を買収し、人間の食用市場にも参入しましたが、売上の10~15%程度にしかならないとCEO自身が認めていました。つまり、収益の柱となる市場が定まらないまま、多額の資金を投じてしまったのです。
資金は600億円超え、でも売上は伸び悩み
驚くことに、Ÿnsect は6億ドル(約600億円)以上の資金を調達していました。ロバート・ダウニー・Jr.のフットプリント・コアリションやフランスの公的投資銀行Bpifranceなど、環境や持続可能性に関心のある投資家が多く支援していました。
しかし、2021年の売上は約1,780万ユーロ(約21億円)で、しかもこの数字は子会社間の内部取引で水増しされていた可能性も指摘されています。2023年には7,970万ユーロ(約94億円)の純損失を計上し、経営は厳しい状況に陥りました。
市場の現実と戦略の迷走
昆虫タンパク質は環境負荷の少ない代替タンパク質として期待されましたが、動物飼料市場は価格競争が激しく、持続可能性だけでは価格面で太刀打ちできませんでした。昆虫の餌として使われる穀物副産物は既に飼料として使われているため、昆虫タンパク質はコストがかかるだけの「余計な工程」となってしまったのです。
一方でペットフード市場は価格よりも品質や差別化が重視されるため、昆虫タンパク質の可能性がありましたが、戦略の転換は遅れ、2023年にようやくペットフードに注力する方針に切り替えました。
大型工場への投資が裏目に
Ÿnsect は北フランスに「世界で最も高価な昆虫農場」と呼ばれた巨大工場「Ÿnfarm」を建設しましたが、これは莫大な資金を消費する一方で、まだビジネスモデルや単位経済が確立されていない段階での賭けでした。結果的にこの投資が経営を圧迫し、CEO交代や工場閉鎖、リストラに至りました。
ヨーロッパのスタートアップの課題
IEビジネススクールのジョー・ハスラム教授は、Ÿnsect の失敗は昆虫ビジネスの問題だけでなく、ヨーロッパの産業スケールアップの難しさを象徴していると指摘しています。大きな夢や技術開発には資金が集まるものの、実際の工場建設や量産化には資金が足りず、結果として産業化が進まないという課題です。
同様の例として、スウェーデンのバッテリーメーカー Northvolt やドイツの空飛ぶタクシースタートアップ Volocopter、Lilium なども挙げられています。
今後の展望
Ÿnsect の破産は業界全体の終わりを意味するわけではありません。競合の Innovafeed は小規模から段階的に拡大しており、比較的安定しているようです。また、Ÿnsect の元CEOはフランスの産業系スタートアップ支援団体を立ち上げるなど、ヨーロッパの産業育成に向けた動きも出ています。
今回のケースは、環境や持続可能性を掲げるスタートアップが直面する現実的な課題を示していると言えそうです。夢のある技術でも、ビジネスモデルや市場の特性をしっかり見極めることが重要だと感じますね。引き続きウォッチしていきたいですね!
