今日は、ドバイ発のスタートアップ「Cercli(サークリ)」についてご紹介します。MENA(中東・北アフリカ)地域の企業向けに、AIを活用した統合型の人事・給与管理プラットフォームを開発している会社です。最近、ヨーロッパのベンチャーキャピタル「Picus Capital」主導で、シリーズAラウンドとして1,200万ドル(約18億円)の資金調達を発表したそうです。
Cercliは、以前Careem(中東版Uberのような存在)やKitopi(クラウドキッチンのユニコーン)で働いていたAkeed AzmiさんとDavid Recheさんが立ち上げた会社です。もともとMENA地域の企業では、給与や人事、コンプライアンス管理がバラバラのシステムで運用されていることが多く、情報の連携がうまくいかないという課題があったみたいです。
そこでCercliは、最初は人事・給与・コンプライアンスを一つのプラットフォームでまとめて管理できるサービスを提供していましたが、最近はAIを基盤に据えた「AIネイティブ」なシステムに大きく舵を切ったとのこと。たとえば、給与計算エンジンをゼロから作り直し、複数国にまたがる企業でも効率的に運用できるようにしたそうです。
こうしたAI活用の効果もあってか、過去1年で売上が10倍以上に伸び、現在は50カ国以上で年間1億ドル以上の給与処理を行っていると伝えられています。競合にはDeelやRemote、SAP、Oracleなど大手も多いですが、Cercliは「AIを最初から組み込んだ設計」が差別化ポイントになると考えているようです。
また、採用管理の機能もAIエージェントが候補者リストを自動で作成したり、社内データから人材を探したりできるようになっているそうです。自社の経理や会計もAIエージェントで自動化しているとのことで、14人という少人数チームでも月次21%の成長を維持できているのは、こうした効率化の賜物かもしれません。
MENA地域の企業は、これまで経費精算や給与、採用などでバラバラのサービスを使っていたケースが多いようですが、Cercliは「全部まとめて一つで管理したい」というニーズに応えられるのが強みだと話しています。AIネイティブな設計のおかげで、導入も2~3日で完了することが多いらしく、従来の大手システムだと数カ月かかることもあるそうです。
今回の資金調達には、Picus Capitalのほか、Y CombinatorやAfore Capital、COTU Venturesなども参加しています。今後はさらにAIを活用した新しいプロダクト開発や、MENA地域でのシェア拡大を目指すとのことです。
HRテック分野は競争が激しいですが、AIを最初から組み込んだ設計や、MENA地域特有のニーズに応える姿勢が、今後どこまで成長につながるのか注目したいですね。