アメリカ AI 規制の州 vs 連邦 最新動向

みなさん、こんにちは。今回はアメリカで進んでいる人工知能(AI)規制の動きについてお話しします。注目すべきは、技術そのものではなく、誰が規制の権限を持つのかという点で激しい議論が起きていることです。

州ごとの規制と連邦政府の対立

連邦政府が消費者保護を重視したAIの統一基準をまだ示せていないため、カリフォルニア州のSB-53やテキサス州のResponsible AI Governance Actなど、多くの州が独自にAI関連の法律を作っています。これらはAIの悪用を防ぐことを目的としています。

一方で、シリコンバレーの大手テック企業やスタートアップは、こうした州ごとのバラバラな規制がイノベーションの妨げになると主張しています。ある関係者は「中国との競争で遅れを取る」と懸念を示しています。

業界とホワイトハウスの一部関係者は、全国共通の基準を設けるか、規制をしないかのどちらかを求めており、州の独自規制を禁止する動きも出ています。具体的には、国防権限法(NDAA)に州のAI規制を阻止する条項を盛り込もうとする動きや、ホワイトハウスの大統領令(EO)の草案で州規制を法的に争うための「AI訴訟タスクフォース」を設置する案が明らかになっています。

しかし、議会では州の規制権限を奪うことに反対する声が強く、今年初めには似たようなモラトリアム案が大差で否決されました。連邦の基準がないまま州の規制を封じると、消費者が危険にさらされ、企業が監視なしに活動できてしまうという懸念があるためです。

連邦基準の内容と今後の展望

連邦議会では、カリフォルニア州選出のテッド・リュー議員らが、詐欺防止や医療、透明性、子どもの安全、重大リスク対策など幅広い消費者保護を盛り込んだ大型のAI法案を準備中です。ただし、このような包括的な法案が成立するには数ヶ月から数年かかる見込みで、だからこそ州の規制権限を制限しようとする動きが激しくなっています。

リュー議員の法案は、AIモデルのテストや結果の公開を義務付けるなど、現状で多くの企業が自主的に行っていることを制度化する内容です。ただし、政府が直接AIモデルを評価する仕組みは含まれておらず、より実現可能性を重視したものとされています。

業界の主張と反対派の声

トランプ政権のAI・暗号通貨担当責任者デイビッド・サックス氏は、州規制を阻止し、連邦の監督も最小限に抑え、業界の自己規制に任せるべきだと主張しています。これに賛同するAI業界の支援PAC(政治行動委員会)は、州規制に反対する候補者を支援し、連邦での統一規制を求めるキャンペーンに多額の資金を投入しています。

一方で、ニューヨーク州議会議員のアレックス・ボアーズ氏は、AIの力を信じつつも「信頼できるAIこそが市場で勝つ」として、合理的な規制の重要性を訴えています。彼は州が迅速にリスクに対応できる利点を強調し、連邦と州の両方の役割が必要だと考えています。

実際、2025年11月時点で38州が100以上のAI関連法を制定しており、多くはディープフェイクや透明性、政府のAI利用に焦点を当てています。連邦議会は多くのAI法案を提出していますが、成立は非常に少ない状況です。

また、多くの議員や州の司法長官が州の規制権限を守るべきだとする公開書簡を出しており、専門家の中には「業界が責任を回避するために連邦規制一本化を求めている」と指摘する声もあります。

まとめ

アメリカのAI規制をめぐる議論は、技術の安全性だけでなく、規制権限の所在を巡る政治的な駆け引きが激しくなっています。州ごとの規制がイノベーションの妨げになるのか、それとも消費者保護のために必要なのか、連邦政府と州のバランスをどう取るのかが今後の焦点となりそうです。

個人的には、AIの急速な発展に対して迅速に対応できる州の動きは重要だと感じますが、同時に全国的なルール作りも不可欠だと思います。どちらか一方に偏るのではなく、両者の良いところを活かした仕組みが求められているのかもしれませんね。引き続きウォッチしていきたいですね!