
国際的な規制枠組みにおける課題
主要20ヵ国(G20)の金融監督機関である金融安定理事会(FSB)は16日、暗号資産(仮想通貨)の国際的な規制枠組みの導入状況を評価する報告書を発表した。
一定の進展は見られるものの、国際的な規制は依然として、断片的で一貫性がなく、仮想通貨市場のグローバルな性質に対応するには不十分としている。
背景としては、各国内当局の責任の断片化、仮想通貨の定義の相違、秘密保護法やプライバシー法などの法的ハードルなどが、効果的な情報共有を阻害する恐れがあることを指摘した。
こうしたハードルが、クロスボーダーの仮想通貨取引に対する効果的・包括的な監督を制約しており、潜在的なシステムリスクに対して各国が協調して対応することを遅らせる可能性があると続けている。
また、法定通貨を裏付けとし、複数の国・地域にまたがって利用される可能性のある「グローバル・ステーブルコイン(GSC)」についても、現在は各国の規制が断片的で一貫性がないと指摘した。
GSCに関する包括的な規制枠組みを確立している法域は比較的少なく、ステーブルコインを決済手段として扱う枠組みがあっても、その多くはFSBの勧告に完全には準拠していないと述べる。
例えば、堅牢なリスク管理、資本要件などが不十分であり、償還および保管要件、情報開示の方法、準備金担保の枠組み、破綻時の処理計画などで法域間に差異があると指摘。このことが、複数の国や地域を横断するステーブルコイン取引にとって監督上の課題となっていると続けた。
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ステーブルコインとは
価格が常に安定している(stable)仮想通貨を指す。ステーブルコインは暗号資産の一種で、BTCやETH、XRPなど変動性のある資産とは異なり、米ドルなどに裏付けられその価値を保つことが目的だ。米ドルの裏付けによるステーブルコイン(USDT・USDC)のほか、アルゴリズムを利用するステーブルコインもある。
また、秘密保護法やプライバシー法については、一部の国や地域では自国の企業が他国の規制当局と情報を共有することが制限されており、機密保持違反などを懸念して、情報の共有を躊躇する場合もあるとしている。
このことは、国を越えた協力要請があった場合の対応に遅延をもたらし、場合によっては協力協定への参加自体を禁止することもあると述べている。より効率的な国際協力のためにはプライバシー法などが課題になるとする格好だ。
ただ、仮想通貨業界では、データプライバシーを基本的人権として尊重することも多く、規制との兼ね合いについては今後注目される。
今後の勧告
FSBは今回の調査を踏まえた勧告も記した。まず、各国の当局はFSBの提唱する仮想通貨規制枠組みが完全に実施されるよう計画を見直し、FSBなど国際機関はその実施を後押ししていくべきだとしている。
また、各国が仮想通貨サービスプロバイダーやグローバルステーブルコインの規制枠組みにおける不足点に対応すること、国境を越える仮想通貨関連活動の規模と性質を評価し、必要に応じて他国との協定を策定することを挙げた。
FSBの役割については、国際機関と緊密に連携して、仮想通貨サービスプロバイダーやステーブルコインに対する規制の国際的な整合性を促進する方法を検討すべきとした。
FSBは2023年、仮想通貨規制に関わる9つの推奨事項を発表している。
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