ソーシャルメディア「X(旧ツイッター)」が、新たに非アクティブなユーザー名を入札形式で売買できる「Handles Marketplace」という機能をベータ版で導入しました。この仕組みは、使われていないユーザー名を再分配するための方法として提供されており、プレミアム会員限定のサービスとなっています。
ユーザーは「ハンドルドロップ」イベントへの事前登録や、プレミアム会員を通じたユーザー名のリクエスト、利用可能な非アクティブアカウントの閲覧が可能です。テッククランチの報道によると、人気のある短いユーザー名や文化的に価値のある名前は、2,500ドルから100万ドル以上の価格で取引される可能性があるとのこと。プレミアムプラス会員は「優先ハンドル」を無料でリクエストでき、その他の会員は「レアハンドル」を直接購入できる仕組みです。
この取り組みは、Xが広告収入以外の新たな収益源を模索する中での一環とも言えます。また、ドメイン名や短いユーザー名が「オンライン不動産」として価値を持つWeb3の資産市場の動きとも関連しているようです。2025年初頭の推定アクティブユーザー数は約5億5,700万人ですが、非アクティブアカウントの数や市場に供給されるユーザー名の量はまだ明らかにされていません。
それでも、この新機能の登場は、ソーシャルメディア上での「デジタルアイデンティティの収益化」というトレンドを象徴していると言えそうです。ユーザー名が単なる識別子から、ステータスシンボルや投資対象としての側面を強めているのが興味深いポイントです。
XとWeb3的アイデンティティの台頭
デジタルアイデンティティに関する議論が続く中、ブロックチェーンを基盤とした命名システムが新たなユースケースとして注目されています。例えば、イーサリアム・ネーム・サービス(ENS)やアンストッパブル・ドメインズといった分散型ドメインサービスでは、ユーザーがウォレットに紐づく読みやすい名前を登録し、長く複雑なアドレスの代わりに使うことができます。
これらの仕組みは、Web3の理念である「オンライン上の自己主権的アイデンティティ」を実現するものとされています。一方で、Xの「ハンドル・マーケットプレイス」は分散型ではないものの、デジタルアイデンティティを資産として捉える点で似た発想に基づいています。Xは仮想通貨やブロックチェーン業界の情報発信の中心地でもあり、伝統的なソーシャルメディアとWeb3的アイデンティティの交差点に位置しているとも言えそうです。
また、コインテレグラフの報道によると、Xは過去にポリゴンのトークノミクス見直しを提案した投資家たちの議論の場としても使われ、その提案がコミュニティの支持を得た例もあるようです。こうした背景から、Xは単なるSNSを超え、Web3関連の議論やアイデンティティの新たな形を模索するプラットフォームとしての役割も担っているのかもしれません。